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茨城県日立市には、とても長い煙突がある。
いや、正確には「あった」と書くべきか。

我が家にも煙突を備えている僕としては、やはりその詳細を知っておかねばなるまい。
恥ずかしながら、つい最近までその存在すら知らなかったのだが。

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というわけで、先日、日立鉱山の跡地にひっそりと建つ、「日鉱記念館」を訪れてみた。
1985年に竣工したというその建物は、とてもモダンな印象だ。

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日立鉱山の大煙突は、当時問題となっていた銅の精錬時に発生する亜硫酸ガスによる煙害に対する解決策として、当時の最高経営責任者だった久原房之助の決断により、1915年(大正4年)に建設された。

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当時としては世界一の高さとなる155.7メートルの巨大煙突。
足場や鉄筋を組んでいくだけでも気の遠くなるような大作業だ。

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このような(近世の)巨大建築物を思うたび、人間の小ささと、人間の持つ力の大きさというものにあらためて感心するほかない。

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頂上付近での作業はさぞかし命がけのことだっただろう。

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いまから100年以上も前のことだ。

この煙突に限らず、巨大な建造物を目の当たりにするたび、人間というのはどうしてこのような途方もないスケールのものを作ろうとするのだろうか、と不思議に思う。
進化した建設機械が豊富にある現代ならいざ知らず、そういったものがまだなかった時代のものを見るたび、驚嘆するほかない。

ちなみに僕は、数ある巨大建造物の中でも、エジプトのピラミッドだけは、いまだに人間の仕業とはどうしても思えない。

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記念館内には、日立鉱山の坑道が三次元的に展示されている。

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まるでアリの巣を俯瞰しているようだ。もしくは抽象画を見ているかのような。
ちょっと想像を絶する広さと深さと複雑さ。

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僕は土木・建設関係については全く無知だけれど、当時、どのようにして、この複雑極まりないアリの巣のような坑道を掘り進んで行けたのだろうか。

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「地下900m」なんて、考えただけでちょっとゾッとする。

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坑夫たちは、毎日、どんな気持ちで地下深くの坑道に降りていったのだろう。

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館内には、様々な種類の鉱石がていねいに陳列されている。
それぞれの鉱石が採掘された瞬間の轟音を想像するにつけ、館内の静寂さが身にしみる。

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当時の重要な娯楽になっていた映画の映写機。

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「ニュー・シネマ・パラダイス」の世界を思い出させる。

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日立の象徴として長年威容を誇った大煙突だが、1993年2月19日、老朽化から下部1/3を残して倒壊してしまう。

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これが現在の姿。
僕は残念ながら倒壊前の煙突を見ることはなかったけれど、これでもまだ十分な存在感だ。
山腹沿いに煙突まで伸びる煙道がその存在感を一層印象的なものにしている。

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資料館の外には、竪坑が現存して残っている。

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ここから、地下900mまで3分ほどだったそうだ。

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竪坑エレベータの上下巻き取り機。
深度を表すメーターの存在感といったら。

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プレートひとつとっても重厚で、厳かな感じがする。
アメリカの会社のようだけど、"NORDBERG"というのはドイツ語だ。
元々はドイツの会社だったのだろうか。

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工作機械の代表格、旋盤。

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削岩機を始め、坑道内の動力源として使われていた圧縮空気を生み出す巨大なコンプレッサ。
ピストンは、人間の大きさをはるかに超えている。

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鉄。機械。

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削岩機がずらっと並ぶ。まるで銃のようだ。

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金属と木材による「機械」そのものの空間。
耳鳴りがするほどしーんと静まり返った空間で、これらが稼働していたときの轟音を想像する。

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錆びた鉄と油の匂いが、なぜか郷愁を誘う。

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「IT」のかけらも感じられない、時が止まったかのような空間。

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かつては、月産5万トンの産出量を誇った日立鉱山。

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しかしそれは、煙害との戦いの連続でもあった。

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大煙突については、新田次郎氏の作品「ある町の高い煙突」で小説化されている。
まだ読み始めていないけれど、さっそく手に入れてみた。
背表紙には「今日のCSR(企業の社会的責任)の原点を描いた力作」とある。


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これからゆっくり読むのが楽しみだ。