いま欲しいものNo.1は、電熱ジャケットだ。
読んで字の如く、電気で熱を発する「防寒着」だ。
そんなもの、何に使うかといえば、そう、おうとばいに乗るときに使うのだ。

おうとばいに乗らない人には想像もできないだろうが、おうとばいというもの、夏はものすごく暑く、冬はものすごく寒いという、通常の何十倍も季節の移り変わりを肌で感じることのできる乗り物なのだ。
特に冬の寒さといったら、まったくシャレにならない。

よく、「風が1m/s吹くと体感温度は1℃下がる」などといわれている。
これをおうとばいに当てはめて考えてみる。
ちょっと肌寒く感じる10℃の気温の中を80km/hのスピードで走ると仮定すると、この場合、時速80km/hというのは、単位換算すると約22.2m/sの風に相当する。
したがって、体感温度はじっとしているときに比較して約22℃下がる計算になる。
ということは、このときの体感温度は10℃ - 22℃ = -12℃(!)にもなる。
そりゃあ、寒いよぉ!真冬の蔵王のてっぺんより寒いんだよぉ!

・・・でも待てよ、夏の場合も考えてみよう。
真夏の暑さを感じる30℃の気温の中を80km/hのスピードで走ると仮定する。
同様に考えると、体感温度はじっとしているときに比較して約22℃下がる計算になる。
ということは、このときの体感温度は30℃ - 22℃ = 8℃になる。
あれれ?決してそんなに涼しく感じないぞ!
夏はどんなに飛ばしても、暑いぞ。

せっかく理論検証したのに、どうやらおうとばいにはこの法則は当てはまらないようだ・・・。

閑話休題。

そんなこんなで、毎冬、くちびるかみしめ、ヘルメットの中を鼻水でぬらぬらにしながら走る冬を快適に過ごすべく、いままで様々な対策を講じてきた。
しかし、どれも決定打にはならなかった。
缶コーヒーは利尿作用ばかりが効果を発揮して全然効果なし。
ありったけの服を着込んでみても、全身ダルマさん状態で動けなくなるばかりでちっともあったかくない。
日本の使い捨て文化の象徴のひとつ、ホッ○イロもいまいち局所的すぎた。
寒く感じるのは空腹だからだ!と、乗る前にはたらふく食うようにしても、きっちり30分後には猛烈な眠気に襲われるし、持続時間も短かかった。

そんなワタシにとって、電熱ジャケットは夢のアイテムなのだ。
なにしろ、自分で発熱してくれるのだ。上半身くまなく。
これを素晴らしいといわずして何と言おう!

よぉし!ことしこそ手に入れるのだ!そして、極楽な冬のツーリングを満喫するのだ!

・・・と、うきうきする一方、自分の中の誰かがこう囁くのだ。

「おいおい、そうやって文明の利器にばっかり頼りやがって。なんだい、だらしないねぇ。おまえは昔はそんなんじゃなかったぞ。だいたい、いま乗ってるバイクにゃぁ、でっかい風防だってついてるし、手のひら暖めるグリップヒーターまでついてるじゃねぇか!それでもまだ不満なのか?それでもバイク乗りだって言えんのか!根性なし!」

・・・そうだよ、オレはもう昔のように若くないのさ。ツライことは金で解決さ。ふふん!

だってさぁ、むかしから欲しかったんだもん!