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出張が近いので、よっこらしょっと押し入れからスーツケースを引っ張り出した。
このスーツケースは、1年半ほどまえに買ったもので、ずっとアコガレていた、ドイツ RIMOWA社製のスーツケースだ。
ヨーロッパ方面の空港では、ベッコベコにへこんだRIMOWAのスーツケースをガラゴロと引っぱっていく姿を数多く見かける。
全体がアルミでできているこのスーツケースは、渋い輝きを放ちつつ、とにかくカッコよい。
安っちいプラッチック製のスーツケースなんか、おとついきやがれ!といった雰囲気で、存在感たっぷりである。
素材がアルミなので、使っているうちに傷やヘコミがすごい勢いでついていくのだが、その傷みっぷりが激しいものほど、周囲に強烈な「旅慣れオーラ」を発散してくれる。
「あぁ、このヒト旅慣れてるんだなぁ・・・」と、思わず羨望のまなざしで見つめてしまう。
ミーハーな我々夫婦は、そんな姿にクラっと来て、それまで使っていたスーツケースもそろそろボロくなったし、いっちょう奮発するか!と購入に踏み切ったのであった。

というわけで、このスーツケースは我が家のひそかな自慢なのであるが、いかんせんまだまだ「旅慣れオーラ」が足りない。「新品臭さ」がまだ残っているのだ。
考えてみると、ボロっちくなるほどカッコよくなっていくものって、意外と多い。
思いつくままにちょっと挙げてみると・・・、
 
 ・ジーンズ ← 「Used感が云々・・・」と、オサレな方々はその傷み具合
          にこだわる。
 ・クルマ ← 特に、はたらくクルマたち。
 ・Zippoライター
 ・辞書 ← 試験前、使ってもいない辞書や赤本をグシャグシャにして机
        にドン!と置いて、周囲にハッタリかましませんでしたか?
 ・キャンプ道具(ストーブ、ランタンetc.) 
 ・鍋 ← 芋煮会のあとの真っ黒にすすけて黒光りしているものなど、す
       ばらしい。

 などなど・・・。

これらに共通して言えるのは、全て「道具」であることだ。
道具というものは、人間の手によって使われるために生まれ、その働きぶりに応じて、使い込まれた輝きというものを放つようになってくる。
ただし、「使いっぱなし」では、ただただみすぼらしくなっていくだけだ。
それ相応の手入れがなされてこそ、ふさわしい貫禄と、それを使っている人間の個性というものが、徐々に徐々に伴ってくる。

早く、我が家のRIMOWAくんにも貫禄が備わって欲しいものだ。

・・・あ、考えてみれば「家」も道具の一種。同じことが言えるんじゃないだろうか。