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オリンピック公園の駐車場にクルマを駐めて、とことこと歩く。

Uバーンの駅を通りすぎると、もうそこはOlympiadorf。
遠くから眺めたときの印象よりも、ずっと大きい。「コンクリートジャングル」という言葉が頭をよぎる。
このOlympiadorfは、現在は一般の住民に提供され、ミュンヘンの一大居住エリアになっている。写真の建物群は、当時、男子選手用の宿舎として使用されていたようだ。

完成してからすでに35年も経っているだけあって、当時は真っ白に輝いていたであろう外壁も、それなりの貫禄を醸し出している。言いかたを変えれば、「薄汚れて」しまっている。
しかし、それにも増して驚いたのは「緑」の多さ。

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各部屋のバルコニーにも、歩道のあちこちにも、緑がうっそうと茂っている。まるで、意識的に無機的なコンクリートを覆い隠そうとしているかのようだ。

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この一帯は、車道と歩道が完全に分離されているため、クルマの騒音も聞こえてこない。
住んでいる住民の多さ(後に調べたところ、約10,000人!)からは想像できないほど、静かで平穏な世界がひろがっている。
時おり、犬を連れた老人や子供たちとすれ違う。
いままで抱いていた暗く重い印象とはずいぶん違う。

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あとで調べて知ったのだが、このOlympiadorfは、ミュンヘンの一大コミュニティとなるべく、先に触れた車道と歩行者エリアの完全分離など、当初からさまざまな革新的な都市計画がなされたようだ。
しかしながら、やはり机上の理想と現実とは異なるもの。
実際には、予想もできなかったようなさまざまな弊害が生じ、住民たちはかなりの苦労を強いられることとなってしまった。
「コンクリートの要塞」、「ゴーストタウン」などと揶揄されたりもしたそうだ。
あながち、僕の抱いた第一印象も間違ってはいなかったということか・・・。

しかし、少しでも住みやすい環境にしようと、住民たちみずからの手で絶え間ない努力が続けられ、現在のような形になったそうだ。
うっそうと生い茂る緑も、そのおかげなのだろう。

暗い歴史と数多くの苦労を背負いつつも、いまはこうして緑豊かな住環境としてしっかりミュンヘンに根づいているOlympiadorfから学ぶことは多い。

今回は見逃してしまったが、次回は「暗い歴史」の現場もぜひ見ておかねばならない。