リスボンの街なか。



なにやら、おそろしく気合の入ったオートバイが人目を惹いていた。
近づいてみると、このヒト、世界中をオートバイで走り回っているようだ。



ニコニコしながら、いままで自分がどんな国を回ってきたのか、身振り手振りで説明してくれる。
たいそう愛想がいいけれど、一言も声を発しない。

そう、この方は耳が不自由なのだ。

我々が日本人であると知ると、パニアケースからアルバムを取り出し、日本を走ったときの写真をたくさん見せてくれた。
北は北海道から南は沖縄まで、くまなくぐるりと走っている。2007年のことのようだ。
我々の住む町も通っている。



オートバイはBMW F650GS。
えい坊と同じオートバイだ。だけども、まったく貫禄が違う。

この方、Yaretz Vladimirさん。

ベラルーシのミンスクという町を起点に、ずっと旅を続けているらしい。
御歳、71歳。



途中、アメリカで大事故に遭って約一年もの足止めを食らいながらも、もう１０年以上も旅を続けているそうだ。



いっしょに記念写真を撮って、握手したその手は、とてもがっしりしていて、力強かった。

勇気とパワーをもらった感じがした。

サイフをすられたくらいで、がっくりしててどうする。

世界は、やっぱり広い。

なんだか、無性にオートバイに乗りたくなった。